現実と数学の区別が付かない

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3次・4次方程式の解法の覚えやすいやつ(個人の感想です)

1次方程式と2次方程式は中学数学で習います。3次方程式と4次方程式も代数的な解法が知られています。

三次方程式 - Wikipedia
四次方程式 - Wikipedia

しかしなんか複雑で覚えにくいですね。今回は本質的に新しい方法ではないですが,個人的に覚えやすいと思う形の3次方程式の解法と4次方程式の解法を紹介します。


両辺を先頭係数で割ることで,先頭係数は  1 にできます。

  x^n+a_{n-1}x^{n-1} +a_{n-2}x^{n-2} +\dots a_1x+a_0=0

さらに  y=x+\cfrac{a_{n-1}}{n} と置くと  n-1次の係数が  0 の方程式 に変形できます。

 y^n+b_{n-2}y^{n-2}+\dots +b_1y+b_0=0

というわけで,以下では n次方程式 (n=3, 4) で先頭項が  1 かつ  n-1次の係数が  0 のものを考えます。

3次方程式の解法

 x^3+px+q=0

を解きましょう。  \lambda をパラメータとして,  x=y+\cfrac{\lambda}{y} と変数変換すると,

 y^6+(p+3\lambda)y^4+qy^3+(\lambda p+3\lambda^2)y^2+\lambda^3=0

となります。ここで  y^4 y^2 の係数は  \lambda=-\cfrac{p}{3} のとき  0 です。
つまり  x=y-\cfrac{p}{3y} と変数変換すると

 y^6+qy^3-(p/3)^3=0

となります。 これは  y^3 に関する2次方程式なので  y^3 を求めることができ,その3乗根を取ることで  y が求まり,それを  x=y-\cfrac{p}{3y} に代入することで  x が求まります。

補足:  y の値は6つ出てきますが, x=y-\cfrac{p}{3y} を変形すると  y^2-xy-\cfrac{p}{3}=0 y に関する2次方程式になるので,2つの  y に対して1つの  x が対応し, x はちゃんと3つになります。 y^2-xy-\cfrac{p}{3}=0 の解と係数の関係に注目すると,6つの y のうち,積が  -\cfrac{p}{3} になるペアが3つあり,そのそれぞれのペアで和を取ったものが  x になります*1。この方法は本質的にはカルダノの方法と同じ計算をしています。

4次方程式の解法

 x^4+px^2+qx+r=0

を解きましょう。まず  x^4 以外の項を右辺に移行します。

 x^4 =-px^2-qx-r

ここでパラメータ  \lambda を導入して両辺に  2\lambda x^2+\lambda^2 を足します。すると左辺は  (x^2+\lambda)^2 になります。

 (x^2+\lambda )^2 =-px^2-qx-r +2\lambda x^2+\lambda^2
 (x^2+\lambda )^2 =(2\lambda-p)x^2-qx+(\lambda^2-r)

ここで,右辺の判別式

 D=q^2-4(2\lambda-p)(\lambda^2-r)

 \lambda に関して3次式です。そこで,3次方程式の解法を用いて  D=0 となるように  \lambda の値を定めましょう。そのとき,右辺を平方完成すると

 (x^2+\lambda )^2 =(2\lambda-p)\left (x-\cfrac{q}{2(2\lambda-p)} \right)^2
 x^2+\lambda  =\pm \sqrt{2\lambda-p} \left (x-\cfrac{q}{2(2\lambda-p)} \right)

となり,符号が  +, - それぞれのときの2次方程式を解いて  x が求まります。この方法は本質的にはフェラーリの方法と同じ計算です。

*1:具体的には,3乗根の主枝を実数の場合には通常の3乗根と一致するように取ると,\begin{align} y=\omega^k~~\sqrt[3]{-\cfrac{q}{2}\pm\sqrt{\left(\cfrac{q}{2}\right)^2 + \left(\cfrac{p}{3}\right)^3}}, ~(k=0,1,2)\end{align} となります(ただし \omega=\cfrac{-1+\sqrt{3}i}{2} 1 の原始3乗根)。この中で,積が  -\cfrac{p}{3} になるものでペアを作り,和を取ることにより \begin{align} x&=&\sqrt[3]{-\cfrac{q}{2}+\sqrt{\left(\cfrac{q}{2}\right)^2 + \left(\cfrac{p}{3}\right)^3}} +\sqrt[3]{-\cfrac{q}{2}-\sqrt{\left(\cfrac{q}{2}\right)^2 + \left(\cfrac{p}{3}\right)^3}} , ~~~~\\ &&\omega^2~~\sqrt[3]{-\cfrac{q}{2}+\sqrt{\left(\cfrac{q}{2}\right)^2 + \left(\cfrac{p}{3}\right)^3}} + \omega~~\sqrt[3]{-\cfrac{q}{2}-\sqrt{\left(\cfrac{q}{2}\right)^2 + \left(\cfrac{p}{3}\right)^3}} , \\ &&\omega~~\sqrt[3]{-\cfrac{q}{2}+\sqrt{\left(\cfrac{q}{2}\right)^2 + \left(\cfrac{p}{3}\right)^3}} + \omega^2~~\sqrt[3]{-\cfrac{q}{2}-\sqrt{\left(\cfrac{q}{2}\right)^2 + \left(\cfrac{p}{3}\right)^3}} \\ \end{align} が元の方程式の解であることが分かります。実際に書くとごちゃごちゃしてますね。