現実と数学の区別が付かない

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数値的半群環のイデアルの生成元の数

k を体とし,正整数 a_1,a_2\dots,a_nで定まる k[t] の部分環  k[t^{a_1},t^{a_2},\dots, t^{a_n}],または k[[t]]の部分環  k[[t^{a_1},t^{a_2},\dots, t^{a_n}]]数値的半群と呼びます。

MathPower にも出ていた可換環botこと龍孫江さんの今日の記事で次の定理が示されていました。

定理
 k[[t^2,t^3]] のあらゆるイデアルは,高々2個の要素で生成される.
blog.livedoor.jp
この「高々2個」の2は k[[t^2,t^3]]の生成元  t^2の指数2と関係がありそうですよね。この定理を一般化した次の定理を示すことができます。

定理
 a_1 < a_2 < \dots < a_n を正整数とする。
 k[t^{a_1},t^{a_2}\dots, t^{a_n}] k[[t^{a_1},t^{a_2}\dots, t^{a_n}]] のあらゆるイデアルは,高々a_1個の要素で生成される.

証明
まず, R=k[t^{a_1},t^{a_2}\dots, t^{a_n}] に対して示す。

k[t^{a_1}]Rの部分環でPID。 R を含む環 k[t] は階数 a_1 の自由 k[t^{a_1}]-加群になっている。Rイデアルk[t] の部分k[t^{a_1}]-加群で,ねじれ部分がないので,階数が高々a_1の自由k[t^{a_1}]-加群になり,特に高々a_1個の要素で生成されている。k[t^{a_1}]-加群としての生成系は当然,R-加群としての生成系でもあるので,Rの任意のイデアルは高々a_1個の要素で生成される。

 R=k[[t^{a_1},t^{a_2}\dots, t^{a_n}]]に対しても,R の部分環 k[[t^{a_1}]]を取って,全く同様に証明できる。
証明終

この証明は単に生成元の数がだけa_1以下ということだけを示していて,具体的にどのような元で生成されるかは教えてくれません。可換環botこと龍孫江さんの証明はイデアルの生成元を具体的に生成元がどのようになるのかを与える構成的な証明です。