現実と数学の区別が付かない

数学ネタのブログです

コインを1万回投げて表がちょうど5千回出る確率

コインを1万回投げて表がちょうど5千回出る確率はどのくらいになるでしょうか?まずはだいたいの感覚で考えてみてください.

この確率は \dfrac{\binom{10000}{5000}}{2^{10000}} となります.WolframAlpha に聞いてみましょう.

N[binom(10000,5000)/2^10000,10] - Wolfram|Alpha

答えは 0.00797864\ldots0.8\% 弱です.予想と比較してどうでしたでしょうか?私は意外と大きな値だと思いました.

2n 回コインを投げて表がちょうど n 回出る確率 \begin{align} q_n:= \dfrac{\dbinom{2n}{n}}{2^{2n}}\end{align} は N=2n, p=\dfrac{1}{2} である二項分布の確率質量関数の最大値です.n が十分大きなとき,これは \mu=Np=n,~\sigma =Np(1-p)=\dfrac{n}{2} である正規分布確率密度関数  \dfrac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma} e^{\frac{(x-\mu)^2}{\sigma^2}} の最大値  \dfrac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma} =\dfrac{1}{\sqrt{\pi n}} とほぼ一致しています.よって \displaystyle\lim_{n\to \infty} q_n=0 ではあるものの,その収束は遅めです.

実際にいくつかの n について表にしてみると,確かに  n\gg 1 のとき q_n \dfrac{1}{\sqrt{\pi n}} は近い値になることが見て取れます.

n 10 100 1000 10000 100000
q_n 0.17620 0.056348 0.017839 0.0056418 0.0017841
\dfrac{1}{\sqrt{n\pi}} 0.17841 0.056419 0.017841 0.0056419 0.0017841

q_n\dfrac{1}{\sqrt{n\pi}} で近似されることは,ガンマ関数の漸近近似式\begin{align}
\Gamma(x) \sim \sqrt{\dfrac{2\pi}{x}} \left(\dfrac{x}{e}\right)^x~~(x\to \infty)
\end{align}と  \Gamma\left(n+\dfrac{1}{2}\right)=2^{-2n}\dfrac{(2n)!}{n!} \sqrt{\pi} より次のように示すこともできます. \begin{align}
q_n&=\dfrac{(2n)!}{2^{2n}(n!)^2}=\dfrac{\Gamma\left(n+\dfrac{1}{2}\right)}{\sqrt{\pi}~\Gamma\left(n+1\right)}\\
&\sim \dfrac{1}{\sqrt{\pi}} \sqrt{\dfrac{n+1}{n+\frac{1}{2}}} \left(\dfrac{n+\frac{1}{2}}{n+1} \right)^{n+1} \sqrt{\dfrac{e}{n+\frac{1}{2}}}\\
&=\dfrac{1}{\sqrt{\pi n}}\dfrac{ \sqrt{n(n+1)} }{n+\frac{1}{2}} \left(1-\frac{1}{2(n+1)}\right)^{n+1} \sqrt {e}\\
&\sim \dfrac{1}{\sqrt{\pi n}} ~~(n\to \infty)
\end{align}

複素数値関数の不定積分

複素数値関数

f:\mathbb{R} \to \mathbb{C}複素数値関数と呼ぶ.複素数値関数 f(x) は実関数 u(x),v(x) を用いて f(x)=u(x)+iv(x) と書ける.この微分不定積分を \begin{gather}
f'(x)=u'(x)+iv'(x)\\
\int f(x) dx=\int u(x) dx+i \int v(x) dx
\end{gather}で定める.積分定数はまとめて1つの複素数で書ける.

例えば  \cfrac{1}{x-i}=\cfrac{x}{x^2+1}+i\cfrac{1}{x^2+1} e^{ix}=\cos(x)+i \sin(x)複素数値関数の例である.

\tan^{-1}(x)複素数値関数で表現する

複素数偏角の主値を -\pi \le \mathrm{Arg}(z)<\pi と定め \mathrm{Log}(z)=\log |z| +i \mathrm{Arg}(z) とする (\log は実関数としての対数関数).

このとき,実数 x に対し \begin{align}
\mathrm{\tan^{-1}}(x)=\cfrac{\mathrm{Log}(x-i)-\mathrm{Log}(x+i)}{2i}+\cfrac{\pi}{2}
\end{align}となる.

実際,r=|x-i|=|x+i|,~\theta=-\mathrm{Arg}(x-i)=\mathrm{Arg}(x+i) とすると,\begin{align}
\cfrac{\mathrm{Log}(x-i)-\mathrm{Log}(x+i)}{2i}+\cfrac{\pi}{2}=\cfrac{(r-i\theta)-(r+i\theta)}{2i}+\cfrac{\pi}{2}=\cfrac{\pi}{2}-\theta=\mathrm{\tan^{-1}}(x)
\end{align}である.

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応用

\displaystyle \int \cfrac{1}{1+x^2} dx

\begin{align} \int \cfrac{1}{1+x^2} dx =\mathrm{\tan^{-1}}(x) +C\end{align}x=\tan(t) という変数変換で計算できることはよく知られている.ここでは複素数値関数を利用して計算してみる.\begin{align}
\cfrac{1}{1+x^2} =\cfrac{A}{x-i}+\cfrac{B}{x+i}
\end{align}となる A, B は \begin{gather}
A=\lim_{x\to i}\cfrac{x-i}{1+x^2} =\left.\cfrac{1}{(1+x^2)'}\right|_{x=i} =\cfrac{1}{2i}\\
B=\lim_{x\to -i}\cfrac{x+i}{1+x^2} =\left.\cfrac{1}{(1+x^2)'}\right|_{x=-i} =\cfrac{1}{-2i}
\end{gather}であるので,\begin{align} \int \cfrac{1}{1+x^2} dx &=\int \cfrac{1}{2i(x-i)}+\cfrac{1}{-2i(x+i)}dx\\
&=\cfrac{\mathrm{Log}(x-i)-\mathrm{Log}(x+i)}{2i}+\cfrac{\pi}{2}+C_1\\
&=\mathrm{\tan^{-1}}(x)+C_2\end{align}となる.

\displaystyle \int \cfrac{1}{1+x^4} dx

\alpha^4=1 のとき -\alpha=\alpha^{-3} より, \begin{align}\mathrm{Res}\left( \cfrac{1}{1+z^4}; \alpha\right)=\cfrac{1}{4\alpha^3}=\cfrac{-\alpha}{4}\end{align}である.よって
\begin{align}
\cfrac{1}{1+x^4}
&=\sum_{\alpha^4=1} \cfrac{-\alpha}{4} \cdot \cfrac{1}{x-\alpha}\\
&=\cfrac{1}{4}\left(\cfrac{-1-i}{\sqrt{2} x-1-i}+\cfrac{1-i}{\sqrt{2} x+1-i}+\cfrac{1+i}{\sqrt{2} x+1+i}+\cfrac{-1+i}{\sqrt{2} x-1+i}\right)
\end{align}と部分分数分解できる.よって

\begin{align}
&\int \cfrac{1}{1+x^4} dx\\
{}=&\cfrac{1}{4\sqrt{2}}\biggl(-\mathrm{Log}(\sqrt{2} x-1-i)+\mathrm{Log}(\sqrt{2} x+1-i)+\mathrm{Log}(\sqrt{2} x+1+i)-\mathrm{Log}(\sqrt{2} x-1+i) \biggr)\\
&{+}\cfrac{1}{4\sqrt{2}}\biggl(-i\mathrm{Log}(\sqrt{2} x-1-i)-i\mathrm{Log}(\sqrt{2} x+1-i)+i\mathrm{Log}(\sqrt{2} x+1+i)+i\mathrm{Log}(\sqrt{2} x-1+i) \biggr)+C_1\\
{}=&\cfrac{1}{4\sqrt{2}}\biggl(\mathrm{Log}(2x^2+2\sqrt{2} x+ 2)- \mathrm{Log}(2x^2-2\sqrt{2} x+ 2)\bigg)\\
&+\cfrac{1}{2\sqrt{2}}\biggl(\cfrac{\mathrm{Log}(\sqrt{2} x+1-i)-\mathrm{Log}(\sqrt{2} x+1+i)}{2i} +\cfrac{\mathrm{Log}(\sqrt{2} x-1-i)-\mathrm{Log}(\sqrt{2} x-1+i)}{2i}\bigg)+C_1 \\
{}=&\cfrac{1}{4\sqrt{2}}\mathrm{log}\cfrac{x^2+\sqrt{2} x+ 1}{x^2-\sqrt{2} x+ 1}+\cfrac{\tan^{-1}(\sqrt{2} x+1)+\tan^{-1}(\sqrt{2} x-1)}{2\sqrt{2}}+C_2
\end{align}となる.

元ネタ

↓の動画を見て 1+x^4 を複素係数の範囲で一次式に分解して部分分数分解してから複素数値関数として積分したら計算が楽にならないかなと思ってやってみたのだけれど,そんなに楽にはならなかった.

www.youtube.com

ゼノンの運動のパラドックスは矛盾していない

今回は有名なゼノンの運動のパラドックスと呼ばれるものに関して考えてみます.ざっくり言うと「地点Aから離れた地点Bへの運動は,無限個の中間点を経由しければならないので存在しない」というようなことを言っています.「二分法」「アキレスと亀」「飛んでいる矢」など,理由に当たる部分にいろいろなバリエーションがありますが,どれも「運動が存在しない」というものを結論付けるものです.詳しくは Wikibedia の記事を参照してください.
ja.wikipedia.org

現実には離れた地点まで移動できるわけで,ゼノンのパラドックスが言っているようなことは起きません.しかしこのパラドックスのどこが間違っているかを考え出すと,明確に指摘することが困難であることに気づきます.

先人たちはこの「問題」を解決するための奇妙な理屈をいろいろ考えてきたようで,Wikipedia の記事にも「運動のパラドックスの数学的解説」「哲学的解釈」という項に記述があります.このパラドックスの間違い・矛盾点を指摘しようとする試みが繰り広げられていますが,何を言っているのか私には正直よく理解できません(もしくは「そういう事ではないのでは?」という感想になってしまいます).

この記事では,ゼノンの運動のパラドックスを「数理モデルとは何か」という視点で解釈してみます.結論を先に言ってしまうと「ゼノンの運動のパラドックスは矛盾を含んでいない.ただ現実の現象を表していないだけ」ということになります.

数理モデル

数理モデルに求められるもの

数学は現実そのものではありません.数学を用いて現実の問題を考えるときは,その現象を表現するような数理モデルを数学の世界の中に構築して,その数理モデルを数学で解析するという方法を取ります.

数理モデルに求められるものは次の2つだけと言ってもいいでしょう.

  • 数学的に矛盾していないこと.
  • 現実の現象をよく表していること.

これらに加えてシンプルで美しければ文句なしですが,その辺りは個人の価値観などもあるので置いておきましょう.矛盾を含む数理モデルは考える意味がありませんし,現実の現象と全然違う結果ばかり出力する数理モデルに価値はありません.

さて,ここで大事なのは「無矛盾であること」と「現実をよく表していること」をちゃんと区別できることです.この区別をちゃんとつけることが,ゼノンの運動のパラドックスの謎を解くカギとなります.

矛盾とは

ここで出てきた大事な言葉である矛盾について説明しておきましょう.矛盾というのはある命題 P に対して「P かつ, P でない」という形の命題です.当たり前ですがこれ以外のものは矛盾と呼びません.「あれれ~おかしいぞ~」という感想は矛盾ではないのです.

次のような具体例を考えてみましょう.

増えるウサギちゃんの数理モデル
ある種類のウサギは繁殖力が非常に強く,1年間で群れの個体数が約2倍になるという.そこで,このウサギの群れの個体数を表す数理モデルとして,次の数列 a_n を考えた.\begin{gather}
a_0=10,~~
a_{n+1}=2a_n
\end{gather}a_n は,現在 10羽のウサギの群れの n 年後の個体数を表している.

さて,広大な土地を所有するどうぶつ王国の主であるあなたはこのウサギ 10羽を飼い始め,その個体数の変化を毎年記録していった.

多少のずれはあるものの,この数理モデルは群れの個体数をよく表しているようであなたは満足していた.

しかしある晩,あなたはこの数理モデルに潜む恐ろしい事実に気づいてしまう.この数理モデルは厳密に解くことができ a_n=10\cdot 2^n という爆発的に増加する解を持っていたのだ.

あれれ~おかしいぞ~ウサギたちは際限なく増え続けて100年後には太陽の質量をはるかに超えるウサギの群れが誕生することになってしまう!

さて,この話を読んで「これはとても不思議な話だ」と思う人はいないでしょう.「いや,n が大きいときに数理モデルとして不適切なだけでしょ」と思うのが普通です.そう,この例は n が大きいときに数理モデルに求められる条件の2つ目「現実の現象をよく表していること」を満たしていないだけです.

ここで注意してほしいのは,これは「矛盾」ではないということです.数理モデルの定義 a_0=10,~~a_{n+1}=2a_n そのものには何の矛盾も含まれていません.

もし仮に a_n の爆発的な増加を何とか抑え込もうとして,数理モデルに新たな条件「ある R>0 が存在して,任意の n に対して a_n{<}R である」を付け加えてしまうと,この数理モデルは矛盾したものになってしまいます.「\{a_n\} の上限が存在する」という命題を P で表すと「 P かつ,P でない」という矛盾を含むからです.

この例で分かる通り「数学的には矛盾していない,しかし現実の現象とはかけ離れている」という数理モデルが存在することには何の不思議も謎もありません.

ゼノンの運動のパラドックスの謎

ゼノンの運動のパラドックスのどこがおかしいか指摘しにくいのは,実は先ほどの例と同じような構造があるからです (と私は考えます).つまり「言っていることに矛盾は含まれない,ただし現実の現象とはかけ離れている」言説なので,矛盾は指摘できないのは当然で,さらにウッカリと「無矛盾であること」と「現実をよく表していること」を混同してしまうと,あたかも現実が矛盾を含んでいるかのようなとても不思議なものに思えてしまうのです.しかし実際には,先ほどの指数的に増加するウサギちゃんのモデルと同程度の不思議さしかありません.「運動が存在しない」も「ウサギが指数的に増える」も矛盾を含んでいない,しかし現実ではないだけなのです.

まだ「ゼノンの運動のパラドックスに矛盾が含まれない」ということにいまいち納得がいかない人がいるかもしれません.そこで,これからゼノンの運動のパラドックス数理モデルを具体的に構築してみましょう.

ゼノンの運動のパラドックス数理モデル

数学の舞台は「集合」+「構造」

数学では集合にさらに何か付加的な構造を入れてたものを対象にするのか通常です.例えば集合に演算の構造を入れると,それは代数的な対象となります.

そして,その構造は集合を指定したときに自動的に定まるものではない,というのが重要なポイントです.どのような構造を考えているかはその人が明確に宣言する必要があります.例えば,実数全体の集合  \mathbb{R} と言ったときに,通常の加法や乗法を想像してしまいますが,それ以外の構造,例えばトロピカル演算のような変わった代数構造を考えることも可能なのです.

位相空間

単に要素の集まりである集合に「空間」としての性格を与える構造として位相と呼ばれるものがあります.位相が定まった集合のことを位相空間と呼びます.ここでは位相の定義についての話はしませんが,位相という構造が定まると,各点からの「近さ」を測ることができるようになり,位相空間の間の連続写像を考える事ができるようになるます.

数学で記述できる「運動」のもっとも一般的な形は次のようになります.

「運動」の数理モデル
X位相空間とし,\mathbb{R} には通常のユークリッド位相が入っているものとする.区間 [a,b] \subset \mathbb{R} からの連続写像 \begin{align}
\varphi:[a,b] \to X \end{align}を X 内の \varphi(a) から \varphi(b) への運動と呼ぶ.

離散位相

さて,現実の空間の数理モデルとして \mathbb{R}^3 を考えましょう.通常はユークリッド距離から定まるユークリッド位相を考えるのが普通ですが,それ以外の位相構造を考えることも可能です.例えば,すべての部分集合が開集合であるという離散位相を考えることもできます.

この集合 \mathbb{R}^3 に離散位相という構造を入れた空間が,まさにゼノンの運動のパラドックスのモデルと思える性質を持っています.

離散位相が入った \mathbb{R}^3 内の運動
集合 \mathbb{R}^3 に離散位相を入れた位相空間X とし,\mathbb{R} には通常のユークリッド位相が入っているものとする.閉区間からの連続写像 \begin{align}
\varphi:[a,b] \to X \end{align}は一点写像である.つまり,ある x\in X が存在し,任意の t\in [a,b] に対し \varphi(t)=x となる.

(証明)任意の連続写像 \varphi:[a,b] \to X に対し,始点 \varphi(a) と終点 \varphi(b) が一致することを示せば十分である.なぜなら,一点集合でない連続写像 \varphi:[a,b] \to X が存在したとすると,\varphi(a)\neq \varphi(b') となる a {<}b'\le b が存在して,\varphi[a,b'] への制限が始点と終点が一致しない連続写像となるからである.

さて,連続写像 \varphi:[a,b] \to X \varphi(a) \neq \varphi(b) となるものが存在すると仮定して,矛盾を導こう.

区間  [a,b] \subset \mathbb{R} は連結かつコンパクトであることに注意しておく.  [a,b] は連結なので,有限個の交わりのない開集合の和集合として表すことはできないし,また,コンパクトなので任意の開被覆は有限部分開被覆を持つ.

さて,\varphi の像 \mathrm{Im}(\varphi) を考えよう.閉区間 [a,b] は共通部分のない和集合 \begin{align}
[a,b]=\bigcup_{x\in \mathrm{Im}(\varphi)} \varphi^{-1}(x)
\end{align}として表される.X は離散位相なので特に一点集合は開集合であり,各  \varphi^{-1}(x) は開集合で \{\varphi^{-1}(x) \mid x\in \mathrm{Im}(\varphi)\} は交わりのない [a,b]開被覆となる.

\mathrm{Im}(\varphi) は有限集合と仮定すると,[a,b] が有限個の交わりのない開集合の和集合と表されることになり連結性に矛盾する.よって \mathrm{Im}(\varphi) は無限集合である (無限個の中間地点が必要となる!).しかし無限開被覆 \{\varphi^{-1}(x) \mid x\in \mathrm{Im}(\varphi)\} は1つでも開集合を除いたら開被覆ではなくなるので有限部分開被覆を持たず,[a,b] のコンパクト性に矛盾する.

よって背理法により  \varphi(a)=\varphi(b) である.(証明終わり)

どうでしょう,離散位相を入れた集合 \mathbb{R}^3 が「地点Aから離れた地点Bへの運動は,無限個の中間点を経由しければならないので存在しない」というゼノンの運動のパラドックスを体現するモデルに見えないでしょうか?具体的なモデルが存在するので,当然ゼノンの運動のパラドックスも無矛盾です.

\mathbb{R}^3ユークリッド位相を入れたものも, \mathbb{R}^3 に離散位相を入れたものも,どちらも数学的な矛盾を含みません.しかしどちらがより「現実の現象をよく表している」かは言うまでもないでしょう.

ゼノンの運動のパラドックスとは何だったのか

数学の舞台は「集合」+「構造」で,構造は集合を指定しただけでは自動的には定まらないのでした.しかしゼノンが生きた時代にはそのような考え方はなかったと思います.現代数学を知る人間からは,ゼノンの運動のパラドックスはそのような当時の数学の在り方に対する批判のようにも見えます.

数理論理学や公理系という考え方が広く知られ,より「数学とは何か」ということに自覚的になっている現代に,ゼノンのパラドックスのような話をいつまでも不思議がるような必要もないんじゃないかな思います.

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