現実と数学の区別が付かない

数学ネタのブログです

2022-01-01から1年間の記事一覧

ラッセルのパラドックスとカントールのパラドックスがよく似ている件

素朴に「モノの集まり」のことを集合と定義する素朴集合論では様々な形で矛盾が引き起こされることが知られていて,なかでもラッセルのパラドックスとカントールのパラドックスと呼ばれるものが有名である.この2つのパラドックスは似ている面もあって,たま…

コインを1万回投げて表がちょうど5千回出る確率

コインを1万回投げて表がちょうど5千回出る確率はどのくらいになるでしょうか?まずはだいたいの感覚で考えてみてください.この確率は となります.WolframAlpha に聞いてみましょう.N[binom(10000,5000)/2^10000,10] - Wolfram|Alpha答えは で 弱です.予…

複素数値関数の不定積分

複素数値関数 を複素数値関数と呼ぶ.複素数値関数 は実関数 を用いて と書ける.この微分と不定積分を \begin{gather} f'(x)=u'(x)+iv'(x)\\ \int f(x) dx=\int u(x) dx+i \int v(x) dx \end{gather}で定める.積分定数はまとめて1つの複素数で書ける.例…

ゼノンの運動のパラドックスは矛盾していない

今回は有名なゼノンの運動のパラドックスと呼ばれるものに関して考えてみます.ざっくり言うと「地点Aから離れた地点Bへの運動は,無限個の中間点を経由しければならないので存在しない」というようなことを言っています.「二分法」「アキレスと亀」「飛ん…

Grauert-Remmert の定理(整閉整域の判定法)

与作が木を切っても切らなくても今回は整閉包のお話です.ネター整域が整閉整域であるかを判定する Grauert-Remmert の定理というものがあり,これは整閉包を計算する上でも主要な働きをする面白い定理なのですが,証明が載っている教科書をあまり見かけませ…

987654321/123456789 がほぼ 8

計算機で計算してみると となり,整数部分が で,小数第1位から が 個連続しているので「ほぼ 」ですが,よく見ると が連続している部分がその後にも出てきます.しかも連続する の長さも と ずつ短くなっています.\begin{align} \cfrac{987654321}{1234567…

偶数次元の向き付け可能連結閉多様体の偶数次コホモロジー環は Gorenstein 環

タイトルが長い. を「偶数次元」で「向き付け可能」で「連結」な閉多様体(=コンパクトで境界のない多様体)とする. とおくと, の 係数の偶数次コホモロジー環 \begin{align} H^{ev}(X;\mathbb{Q}):= \bigoplus_{k=0}^{d} H^{2k}(X;\mathbb{Q}) \end{alig…

ニュートン法の2次収束性とヘンゼルの補題

可換環論でのニュートン法が「2次収束」することの証明をちゃんと書いておく.可換環 の可逆元全体を で表す.可換環とそのイデアル に対し の剰余環 での像を と書く. に対し ならば . 証明. とすると, である. とおくと,\begin{align}(x+I^n)(z+I^n)…

周期関数の1周期積分の区分求積法

高橋-森理論など,複素解析を用いて数値積分誤差を行う話があります.今回は比較的わかりやすい例として,周期関数の1周期積分の区分求積法は区間の分割数を増やすにしたがって非常に早く(指数オーダーで)収束することを紹介します. 周期関数の1周期積分 …

無限集合版の鳩の巣原理

羽以上の鳩を 個の巣箱に入れると,少なくとも1つの巣箱に2羽以上の鳩が入るというのが鳩の巣原理と呼ばれるものです.ほとんど当たり前と思えるものですが,これを使った面白い証明がいろいろと知られています.鳩の巣原理を使える形に問題を言い換える技…

x²+y³ のb関数を手計算する

今日は 関数というものの定義を紹介し,さらに の 関数を手計算で求めてみます. は擬斉次孤立特異点多項式と呼ばれるクラスに属する多項式で, 関数は簡単に計算できることが知られています.詳しく知りたい人は次の本の第6章などを参照してください.www.i…

ユークリッドの互除法

正整数 の最大公約数(the greatest common divisor)を で表します. の計算方法として,ユークリッドの互除法がよく知られています. ja.wikipedia.org に対しては,\begin{align}am+bn=\mathrm{gcd}(m,n)\end{align}となる整数 が存在します(上記Wikiped…