現実と数学の区別が付かない

数学ネタのブログです

2018-01-01から1年間の記事一覧

ユークリッド幾何の第1公準

この記事は、日曜数学アドベントカレンダーの2日目の記事です。 adventar.org 1日目はtsujimotterさんの「パスカルの三角形にたくさん出てくる数: 3003」でした。3003はパスカルの三角形に何回出てくるのでしょうか?追記された部分も面白いのでまだ読んでい…

グレブナー基底の力技で既約性判定

今日はネットで見かけた次の問題をグレブナー基底を使って力技で解いてみます。 は の元として既約である。 www1.ezbbs.netちなみに のグラフを描くと♡になります。 今回採用するのは因数分解の可能性を未定係数法でしらみつぶしに調べるというエレガントな…

離散フーリエ変換と中国剰余定理

今日紹介するのは離散フーリエ変換は中国剰余定理としても理解できるというお話です。この見方をすると,合成積が離散フーリエ変換で積に化ける理由がよく分かります。 離散フーリエ変換 を正整数とし, を の原始乗根をします。長さ の複素数列 に \begin{a…

数値的半群環のイデアルの生成元の数

を体とし,正整数で定まる の部分環 ,または の部分環 を数値的半群と呼びます。MathPower にも出ていた可換環論botこと龍孫江さんの今日の記事で次の定理が示されていました。定理 のあらゆるイデアルは,高々2個の要素で生成される. blog.livedoor.jp こ…

留数定理とリーマン・ゼータ関数

この記事は留数定理については学習済みであることを前提にしています。今日はリーマン・ゼータ関数\begin{align}\displaystyle\zeta(s)=\sum_{n=1}^\infty \cfrac{1}{n^s}\end{align}の が正の偶数のときの値 を留数定理を使って計算します。 はベルヌーイ数…

ラッセルのパラドックス

今日は有名なラッセルのパラドックスが起きるメカニズムを考えてみます。ラッセルのパラドックスは数学の基礎である集合論に対する重要な問題提起となったものですが,ラッセルのパラドックスが起きるメカニズム自体には集合論は関係ないというお話です。 ラ…

Murtyの既約判定法

jurupapaさんのブログで面白そうなシリーズが始まりました。可解な代数方程式を冪根で解く計算を数式処理システムMaxima上で行うというものです。 maxima.hatenablog.jp ガロワ理論が生まれた経緯を考えると,究極と言ってもいいくらいのテーマだと思います…

微分方程式の解法で突然出てくる謎の変数変換

今日は変数変換を用いた微分方程式の解法の謎に迫りたいと思います。この記事は微分方程式の初歩である,変数分離形の微分方程式と1階線形微分方程式の解法を知っている方を対象としています*1。 を自由変数, を未知関数とします。 まずは微分方程式をいく…

ヘンゼルの補題からニュートン・ピュイズーの定理へ

に対し,ヘンゼルの補題で の根 が の根に持ち上がるための条件に というものがありました。egory-cat.hatenablog.comこの条件は外すことができません。例として の場合を考えてみましょう。 は 重根 を持ちますが, は既約なので に根は持ちません。では と…

ベキ級数環における平方根の計算

一般化された二項定理によれば のマクローリン展開は\begin{align} (1+t)^{\frac{1}{2}}=\sum_{k=0}^\infty \binom{\frac{1}{2}}{k}t^k,~~~\left|t\right| \end{align}で与えられます。ここで は一般化された二項係数 \begin{align} \binom{\frac{1}{2}}{k}=…

有理数のp進数展開とヘンゼルの補題

今回はヘンゼルの補題を使って次の問題を解いてみます. を ] の範囲で因数分解せよ.この式は3次式なので,因数分解できるなら ()の形の因子で となるものがあるはずなので,全ての場合を試すことでこの問題は解くことはできます.しかしこの方法には と …

3次・4次方程式の解法の覚えやすいやつ(個人の感想です)

1次方程式と2次方程式は中学数学で習います。3次方程式と4次方程式も代数的な解法が知られています。三次方程式 - Wikipedia 四次方程式 - Wikipediaしかしなんか複雑で覚えにくいですね。今回は本質的に新しい方法ではないですが,個人的に覚えやすいと思う…

位相幾何学クイズ・その1

幾何学にも初等幾何学,微分幾何学,代数幾何学などなど,いろいろな種類があります。それらは「どういう図形(多様体)を扱うか」と「どういう図形を『同じもの』と捉えるか」の2点によって区別されます。今回の記事は位相幾何学と呼ばれる幾何学に関するク…

連立方程式とその解の重複度

今日はTwitterで見かけた連立方程式を解いてみます。 \begin{align} \left\{\begin{array}{ccc} x^2+y+z &=& 1\\ x+y^2+z &=& 1\\ x+y+z^2 &=& 1 \end{array}\right. \end{align}元ネタは多分これ↓ http://mathsoc.jp/publication/tushin/0303/maruyama3-3.p…

ある数が 0 であることの証明に360年かかることもある

今日は3月14日ということで円周率の日です。ここはひとつ円周率をネタに記事を書いてみましょう。円周率は と無限に続く数ですが,時間と計算のリソースさえあれば理論的にはには第何桁目までも計算することはできます。しかしそのことをもって,我々が円周…

美術が文学よりも奥が深いことを数学的に証明してみる

警告 この記事はうっかり現実と数学の区別が付かなくなって書いてしまったクソ記事です。ご注意ください。 今日は絵画・彫刻などの美術が,俳句・短歌・小説などの文学よりも奥が深いことを数学を使って証明してみましょう。まずは何をもって奥が深いという…

働きアリの法則と微分方程式

こんな面白い記事がはてブに上がっていました。ざっくり言うと,350回以上も引用された,「ロサダの法則」というものを提唱した心理学の論文があるのですが,そこで使われている微分方程式のモデルに妥当性が全く無いことが明らかになったというお話です。そ…

京大数学2018問2とブニャコフスキー予想

今年度の京大の入試問題がネットでも見られるようになりました。 kaisoku.kawai-juku.ac.jp 理系数学の問2(文系数学の問3)は次のような問題でした。 が素数となるような整数 を全て求めよ。この問題自体は割と簡単に解けます。解答例: 以下, は全て で考…

エレガントに解いてみる ~連続して先手番を引いてもクレームを入れないであげておくれよの巻~

将棋ソフトPonanzaのメイン開発者である山本一成さんのnote。note.mu 問 コインを100回投げて、表か裏が10回連続で出る確率は? 道に落ちている食べ物は拾って食べてしまい,ネットに落ちている数学の問題は解いてしまうのが人間の性というやつです。今日は…

数理モデル化の効能と,掛け算の順序問題

現実の問題を数学の問題に翻訳することを数理モデル化と言います。数理モデル化の効能はもちろん数学を問題解決に使える事です。今回はその効能をもう少し詳しく見ていきましょう。この数理モデル化の効能を理解すると,なぜ数学者をはじめとする理系の教育…

「数学」と「実在論」

はじめまして。気まぐれで数学に関するブログを始めてみました。 数学に興味があって勉強したい,もしくは仕事などで使うので数学を勉強しなければならないという人達にとって,何の役にも立たないような内容を目指してやっていきたいと思います。 世の中に…