可換環論でのニュートン法が「2次収束」することの証明をちゃんと書いておく.
可換環 の可逆元全体を
で表す.可換環とそのイデアル
に対し
の剰余環
での像を
と書く.
証明. とすると,
である.
とおくと,\begin{align}(x+I^n)(z+I^n)&=xy(1-a+a^2+\cdots a^{n-1})\\
&=(1+a)(1-a+a^2+\cdots +(-a)^{n-1})\\
&=1+ (-1)^{n-1}a^n\in 1+I^n\end{align}より が
の逆元となる.証明終
表記を簡単にするために の可逆元
の逆元
を
と書くことにする.これは
を
で考えてその像を取っているのではないことに注意(
は
で可逆とは限らない).次の定理に現れる
もこの意味での逆元である.
証明. は
の取り方より自明.
となる
が存在する.
より \begin{gather}
f(a)+f'(a)(b-a)\in f'(a) I^{2n}\subset I^{2n},\\
b-a\in -\cfrac{f(a)}{f'(a)} +I^{2n} \subset I^n
\end{gather}であるので, が成り立つ.
また, より
であるので\begin{align}f'(b)+I=f'(a)+I\in (R/I)^\times\end{align}である.証明終
この定理はニュートン法の1ステップで, の
における単根
が
における根
に持ち上がるということを言っている.
が
に改善されており,ニュートン法は「2次収束」である.
\begin{align}
x_0&= a, \\
x_{n+1}&\in x_n -\cfrac{f(x_n)}{f'(x_n)} + I^{2^{n+1}}.
\end{align}このとき,
f(x_n) \in I^{2^n},~x_{n+1}-x_n \in I^{2^n}
\end{align}が成り立つ.
特に が収束するとき,
を満たす.